わが子の将来を思うからこそ、小学校受験をしたほうがいいのか、しないほうがいいのか迷うことは親ならば当然のことです。子ども達の受験に関わって15年以上、そしてわが子の受験に親子二人三脚で戦うひとりの親として見た、小学校受験のメリットとデメリットをまとめました。最後に自身の経験から感じたことにも触れています。
目次
小学校受験のメリット
まずは小学校受験をするメリットには、一般的に想像できること、受験のプロだからわかることがあります。さっそく具体的に見ていきましょう。
一般的に言われるメリット
より質のいい教育が受けられる
小学受験をする親の気持ちとして、大切なわが子だからこそ「より質のよい環境で教育を受けさせたい」という強い思いがあります。
実際に受験入学をする小学校の多くは独自のカリュキュラム、イベント、授業科目を設けており、一般的な公立小学校では経験できないような時間を過ごせます。
エスカレーター式に進学できる
小学校受験を考える保護者の中には、なるべく受験回数を減らしてあげたいという思いもあります。中学・高校・大学を併設している小学校であれば、たいていエスカレーター式で大学まで進学できるため、後々の受験の心配がありません。
また、中学や高校で外部の学校を受験し、残念な結果であっても、併設の中学や高校に進学できるケースが多いです。つまり、安心して外部の学校の受験にチャレンジできるともいえます。
教育に関心のある家庭の親子と関われる
小学校受験を考える保護者は、わが子の教育に関してかなり熱心です。特に、親子ともども初めての受験の場合は不安なことも多いのが事実。
しかし、小学校の受験をすることで、周囲に受験の相談相手となる保護者や知識のある保護者と知り合いになれるので、受験に有益になることが多いです。
受験のプロだからわかるメリット
さまざまな教養を身につける機会に恵まれる
小学校受験をする家庭では教育に対する意識が高いので、ほとんどの子どもが習いごとやお稽古ごとをかけ持ちしています。なかでもあまり知られていない習いごとや教室に通っている子どもも多いです。
習いごとやお稽古ごとの種類も千差万別なので、初めて知り、習いに行くきっかけにもなります。
価値観の近い家庭のお子さんと関われる
小学校受験をする保護者同士の考え方や価値観は近い傾向にあります。そういった大人に育てられた子どもであれば、通っている習いごとやお稽古ごと、考え方や物事のとらえ方も似てくる傾向が高くなるので、価値観の近い家庭のお子さんが集まりやすくなります。そのため、価値観の違いから生じる些細なトラブルは比較的少ないです。
小学校受験のデメリット
次に、小学校受験を行なうデメリットです。ここでも、一般的に想像できること、受験のプロだからわかることに分けてみていきましょう。
一般的にいわれるデメリット
子どもへの負担が大きい
小学校受験をするためには、受験に備えた学習塾や習いごとに通う必要があります。たいてい6歳で受験を迎えるため、早い子どもであれば生まれてすぐから準備を始めています。
そのため、小学校受験をしない子どもと比べると、遊ぶ時間や、場合によっては睡眠時間が減るため、子どもに負担となるケースもあります。
入学後の通学時間・通学手段の問題
一般的に、受験して入学する小学校は自宅から遠方にあることが多いです。通学時間がかかるので、朝は早く、帰宅は遅くなることも珍しくありません。
また、通学手段として電車とバスの乗り継ぎを選択しなければならないケースもあります。1日や2日だけのことではありませんので、遠距離通学による6年間の子どもへの負担は大人が想像する以上に深刻です。
受験のプロだからわかるデメリット
通学時間がかかる場合は習いごとの併用が難しい
「小学受験が終わってからも塾や習いごとに通い続けたい」と子ども自身が思っていても、通学に時間がかかると、塾や習いごとに通うこと自体が難しくなります。
学校が休みである土日に塾や習いごとをするとなれば、子どもがゆっくり休める日がなくなってしまうので、現実には塾や習いごとを諦めなければならないことも。
金銭的負担が大きい
小学校受験をする場合、受験に向けた塾や習いごとにも費用がかかります。そして入学先が私立だと入学金や授業料なども発生するため、金銭的負担はかなりのものです。
外部中学・高校・大学受験へのハードルが高くなる
中学・高校・大学が併設されている小学校で起きやすいことに、外部進学が難しいということがあげられます。基本的にエスカレーター式で進学できるので、親子ともども「受験が必須」という意識がありません。その結果、気持ちに余裕が生まれてしまうため、受験に立ち向かえないことも。
また、外部受験する場合は、小学校からのアドバイスはほとんど期待できないので、家庭教師や塾といった学校外の「受験のプロ」の力を借りる必要があります。
入学した小学校に合わなくなることも多い
小学校受験をする時期はまだ6歳で、人格形成が未熟です。そのため、子どもが成長していくにつれ、人格や個性、物事の好みも変化してくる可能性があります。
よかれと思って行なった受験で、入学した小学校に合わない、友だちとうまく馴染めないケースもあり、不登校に陥っているケースも増えています。
後々の成長過程に影響が出やすい
子どもを通わせたい、子どもが通いたいと選んで受験した小学校なので、価値観や考え方、家庭環境が似ている親子が多くて当然です。
しかし一方で、価値観や考え方、家庭環境などがまったく異なる人に接する機会が少なく、社会に出たときに違った環境に馴染めないといった問題も起きやすいです。
ひとりの親として、小学校受験に思うこと
わが家でも小学校受験を考え、やめることになった経緯を紹介します。
親としての葛藤
この春、中学を卒業するわが子は小学校受験をせずに、自宅から近い公立小学校に通うことを子ども自身が選びました。
親としては、教育環境の整った小学校に通わせたい反面、通学電車とバスを併用するため、睡眠時間が少なくなることや通学による疲労など、子どもへの負担が気になりました。
わが子が受験予定の小学校を拒否
迷ったあげく、実際に受験する小学校に通うイメージをさせて、子ども自身に決めさせようと思いました。
そして、電車とバスに乗って小学校の見学に行ったのですが…。小学校に着くなり「毎日できない」と一言。つまり毎日通えないとはっきり言われたことで、小学校受験をやめました。
結果的に中学校受験が成功した
成長していくわが子は、自ら選んだ最寄りの小学校は合わなかったようです。今度は子どものほうから中学受験をして遠方の中学に行くといいだし、無事に合格しました。
「通学の負担が少なかった分、塾や習いごとがたくさんできて、時間がしっかりかけられたので、中学に受かった。遠い小学校に通っていたらつぶれていた」というわが子の一言は大きかったです。
小学校受験をするかしないかは慎重に決めよう
受験のプロとして日々受験生と呼ばれる子どもに接しています。日々感じること、それは年々集中できない子ども、睡眠負債を抱えている子どもが増えていることです。
特に、通学に負担がかかっている子ども達の、疲労の蓄積が想像以上に重いと感じています。塾や習いごとを頑張って続けている子どもは、睡眠がしっかりとれない状況に陥っています。
環境が整っている小学校に通わせたいという親の気持ちも十分理解できますが、子どもにかかる負担の大きさで、小学校受験をするかしないかを決めるほうが、何かとトラブルが少ないのではないでしょうか。