小学校受験塾の講師をしていた時期に、受験に向いている子と、そうでない子を如実に感じることがありました。やはり小学校受験というのは、受験生であるお子さんの年齢がまだ5歳足らずです。そこで、合格できる子どもは?という点に立ち返って考えたとき、よい意味で「子どもらしさ」を持ち合わせている子が、最初に台頭するのだと感じました。本記事では、お受験に合格できる子どものタイプについてまとめてみました。
「子どもらしさ」とは?
いつもはつらつとしていて、好奇心旺盛なお子さんは語彙力にも長けているものです。知りたいものを知ろうという探求心を満たすために、言語をフル活用するからです。わからないことは積極的に質問をしながら、お受験の準備期間の波に上手に乗れている子は、塾に通うことに対しても何ら疑念を持たず、むしろ楽しみながらその時間をすごせているように感じます。
そういう意味でも、無邪気で「子どもらしさ」を損なっていない子は、小学校受験に向いています。学力の差が点数として反映されるのは、中学校受験以降の話です。小学校の場合には、そこに焦点は当てられていないのです。
子どもは常に「なにか面白いことはないかな?」と考えています。興味のあるものに対しては気持ちが動かされ、どんどんそのことを知ろうとします。この素晴らしい探求心は、子ども時代にしか芽生えない気持ちです。つまり、小学校受験に向いているお子さんの特徴のひとつは、何事においても積極性を持って努力ができるという点です。
ペーパーテストがよくても…
“お受験=お勉強”という考え方がありますが、実際にふたを開けてみると、小学校受験には数多くの常識やマナーといった、お決まりの出題がされています。つまり、ただ勉強だけをしていれば合格できるのか?といえば、それだけではないのです。お友だちとも仲よくできて活発に外遊びができることこそ、「子どもらしさ」といえるでしょう。
子ども同士の関りというのは、行動観察で考査される項目です。実際に、自分勝手な行動を起こしていないか?相手を傷つけるような行為をしていないか?そして周囲と調和しながらすごせているか?ということが考査されるわけです。ふだんから我慢の足りないお子さんの場合には、たとえお受験の本番であっても、かんしゃくを起こしてその場の雰囲気を乱す可能性もあります。それでは、何の意味もありません。ペーパーテスト以上に大切なのは、ルールを重んじて、ある程度は我慢をしながら過ごせるかどうか?という点です。
最終的に問われる家庭のしつけ
しつけの行き届いたお子さん、というのはどの場面でも好かれます。そして小学校受験でも、受かりやすいという法則があります。これは、塾や幼児教室、小学校が教えてくれることではありません。それ以前に、家庭教育の領域で学ぶべき点なのです。
ここに気づいている親御さんは、小学校受験を見すえた段階で、しつけを見直すものです。ふだんは見すごしていたことに対しても、真摯に取り組みます。お片づけやお手伝い、そして生活習慣までもが、家庭のしつけの範囲なのです。
「家庭のしつけはどうなのか?」を問われるのが小学校受験であると考えてください。そしてある一定のラインを超えているお子さんこそが、受験をクリアできるタイプであることも知っておいてください。
結局は“我慢強さ”が受験を制する
しつけ面では、まだ幼いからということを理由に、多くの親御さんが適当なところでその手綱を緩めます。ただ、小学校受験にのぞむ場合には、言われたことをきちんと守れ、大騒ぎをせず、目上の人には敬意を示せる余裕が必要です。もちろんすべてを達観することは難しいですが、人として世間に出ていくときに、よい意味での“我慢強さ”は絶対にそのお子さんの長所にカウントされます。
毎日同じことを繰り返し口にして、しつけることは大変な作業です。周囲へのマナーを身につけることは、家庭のなかでも信念をもって取り組むべきことです。家庭ごとにルールは存在してもよいのです。ここまでは絶対に!というルールも必要です。お子さんにとっては、やや窮屈に感じることもあるかもしれません。それでも、親はあきらめずに教え続ける姿勢が大切です。親の“我慢強さ”も試されるのが、小学校受験であると心得ておきましょう。
そもそも、小学校受験とは「当たり前のことができる」ことを求められます。しつけの行き届いているお子さんは、試験官の目にすぐに留まります。言葉をほんの少し交わしただけでも、その子の資質まで見抜けるものなのです。
利発さと活発さ
小学校受験に合格する資質とは、何事においても興味深く取り組む利発さと、機敏に物事に反応して興味を示す活発さです。その両面を絶妙のバランスで持ち合わせているお子さんこそが、受験に向いている子なのです。お受験対策をどれだけ早く始めても、なかなか、利発な部分が開発できないケースもあります。逆に、準備期間が短くても、小学校受験に向いている中身を持ち合わせている子も存在します。すべては家庭教育のなせる業であることを、最初の段階で知っておくと、対処の方法も少しずつ変わるものです。
子どもらしく元気に挨拶ができて、わからないことは積極的に質問をするという勇気を持てることも大切です。そして同年代の子と一緒の場面になっても、自分を乱さずに、極力冷静にやりすごせる強さを持つことも、お受験においては強みになります。
感化されやすいタイプは、お受験にはかなり不利になります。何事にも大きく動じないという、おおらかさを感じさせることができるお子さんこそ、真の意味で小学校受験に向いているタイプのお子さんであるといえるのです。